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2008

Sep

26

会議開催報告

博多駅地区社会実験シンポジウム 第1回「人が集い、にぎわいのある、歩いて楽しいまち”はかた“を目指して」を開催しました

博多駅地区社会実験シンポジウム
「人が集い、にぎわいのある、歩いて楽しいまち”はかた“を目指して」

平成20年9月25日(木) 13:30~16:15 (グランド・ハイアット・福岡)
主催 博多駅地区社会実験実行委員会
共催 博多まちづくり推進協議会
後援 朝日新聞社、九州運輸局、九州地方整備局、TVQ九州放送、テレビ西日本、(独)都市再生機構九州支社、西日本新聞社、日本経済新聞社西部支社、(財)福岡アジア都市研究所、福岡県、福岡市、読売新聞西部本社

2011年の九州新幹線鹿児島ルート全線開通を見据え、博多駅地区の回遊性向上などを目指す博多駅地区社会実験実行委員会は9月25日、「博多駅地区社会実験シンポジウム」を福岡市博多区のグランド・ハイアット・福岡で開いた。同実行委は今月4日から26日まで、博多駅地区の「にぎわい回遊軸」を創出する社会実験「はかたんウォーク」を実施しており、シンポジウムでは識者や住民、行政関係者などを招き、実験の意義や狙いなどを講演した。
第一部Ⅰ 基調講演
「都市部におけるトランジットモールについて」
日本大学総合科学研究所教授・高橋洋二

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市民主導で実験を
まちの中心商店街にシャッターが下り、高齢者が取り残されてコミュニティーが崩壊するまちが全国各地で増えています。モータリゼーションへの対応の遅れ、大規模店舗の郊外進出、公共施設の郊外移転に伴い住民が移動することなどが原因です。
まちに再び活気をもたらすには、商業を盛り上げ、コミュニティーを存続させて、独自の文化や歴史を継承し、活発な教育、文化活動をしなければなりません。一言でいえば「人が集い、にぎわいのある、歩いて暮らせるコンパクトな楽しいまちづくり」です。
徒歩で施設やサービスを利用できるコンパクトなまちにするために、まちの「環境容量」を考慮し、進入するマイカーの量をコントロールして公共交通機関を整備し、渋滞をなくして環境を守る「交通需要マネジメント(TDM)」の考え方が注目されています。
TDMの具体的方法にトランジットモールがあります。まちの周辺に駐車場を配置し、中心部へのマイカーの進入を遮断し、道路を歩行者、自転車、公共交通機関に開放する方法です。ヨーロッパには、フランスのストラスブールやドイツのフライブルクなど、トランジットモールを実現している都市が多数あります。
実現に向けた数々の調整は行政が主導するのではなく、住民、通勤労働者、事業者、旅行者など利害関係者が自分たちで進めるのが賢いやり方です。日本では1999年度から社会実験制度が始まり、いくつかの都市で実施されています。中でも那覇市は数回の実施後、国際通りに日本で初めてトランジットモールを定着させました。博多駅地区の社会実験で、博多のまちが楽しく歩ける空間になるよう期待します。
Ⅱ 事例報告
「歩くまち・京都」の実現に向けて~「歩いて楽しいまちなか戦略」の取組~
京都市都市計画局歩くまち京都推進室企画課長・林裕之

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「歩きやすさ」高い評価
歴史的都心地区と呼ばれる京都市の市街地の中心部で昨年10月、京都市が策定した「歩いて楽しいまちなか戦略」の取り組みとして社会実験を実施しました。3日間、四条通の歩道を拡幅するとともに、車道を路線バスとタクシー専用に、細街路を歩行者専用道路にしました。
期間中は歩行者が約25%増加、自動車交通量は約45%減少しました。歩道と細街路の歩きやすさに高い評価が得られました。
地元住民に自動車使用の変化について尋ねると、規制対象外の地区住民の約6割、規制対象内の地区住民の約半数が普段と変わらなかったと回答しました。荷物の搬出入への影響については、対象内事業者の約35%、対象外事業者の約20%が困ることがあったと回答しています。
このような「歩行者と公共交通を中心にした、歩いて楽しいまちづくり」を進めるべきだと答えた人は来街者の約9割、住民の約6割、事業者の約5割に達しました。
課題としては周辺道路の負荷軽減や荷さばきスペースの確保、細街路の歩行環境と自動車の両立が挙げられます。住民や関係者とさまざまな角度から課題解決に向けた議論を進め、歩いて楽しいまちの実現に向け、さらに取り組みを進めたいと考えています。
Ⅲ 実施計画
博多駅地区社会実験について
博多駅地区社会実験実行委員会事務局長・中野量太

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いつもと違う博多感じて
博多駅地区社会実験「はかたんウォーク」の目的は博多駅地区と天神地区を結ぶ「にぎわい回遊軸」の形成、安心・快適に通行できる歩行者空間の確保です。
3つのコンセプト「通りにわかりやすさとにぎわいを」「通りに歩きやすい空間を」「環境と健康にやさしい移動手段の提供」に従い、メニューを設定しました。「通りにわかりやすさとにぎわいを」の実施メニューは、親しみやすい通りの名称を表示するまち案内サインの設置、街頭パフォーマンス、博多ハロウィンパレード、キャンドルイベント、ストリートバナー、オープンカフェ、フラワーコーナーなど。「通りに歩きやすい空間を」のメニューは自転車走行スペースの設置による歩行スペースの確保、第2タクシープールの設置による路上駐車の削減と見通しの良い空間の確保。「環境と健康にやさしい移動手段の提供」のメニューは自転車タクシーとレンタサイクルの展開、おしチャリ啓発活動、公共交通の利用を促進するスタンプキャンペーンの実施などです。
今月4日から始めており、25日、26日にはすべてのメニューを同時に展開します。期間中ぜひ博多駅地区にお越しいただき、いつもと違う博多のまちを感じてください。
第二部
パネルディスカッション
「博多駅地区におけるにぎわい回遊軸の形成について」
コーディネーター
樗木 武 (九州大学名誉教授、博多駅地区社会実験実行委員会委員長)
アドバイザー   
高橋 洋二(日本大学総合科学研究所教授)
パネリスト   
林  裕之(京都市都市計画局歩くまち京都推進室企画課長)
福山 誠 (博多区自治協議会長連絡協議会会長、博多駅地区社会実験実行委員会副委員長)
野口 宏一(九州地方整備局道路部長)

歩いて楽しい街つくろう、健康・環境に優しい移動法も
樗木 2011年の九州新幹線鹿児島ルート全線開通に加え建築物の建て替え需要などが加わり、博多の地区開発が進んでいます。変革のプロセスの中でどのようなまちづくりをすべきなのか。社会実験のキャッチフレーズ「人が集い、にぎわいのある、歩いて楽しいまち〝はかた〟を目指して」には博多のあるべき姿が集約されています。
野口 博多は旅行者の乗り換え拠点でもありますが、乗り換えの合間にまちに出る人はまれでしょう。わき道をのぞくと入ってみたくなるようなにぎわいの創出や、通りの名前を活用した道案内は、回遊性の向上につながるのではないでしょうか。
 京都の社会実験に際し、来訪者を呼び込むイベントは一切しませんでしたが、歩行者は四条通で約25%、周辺で約19%増加しました。実験中は四条通を歩く人々の活気が周辺の細街路(さいがいろ)ににじみ出ていくようでした。京都には博多と同じく町衆が支えてきた歴史と伝統があります。地域への愛着と強い自治意識に支えられた地域コミュニティーを基盤に、地域ぐるみで進める必要があります。
福山 博多を代表する山笠とどんたくは、どちらも出ている人が一生懸命だから楽しく皆さんも喜んでくれます。住民自身がまず博多を知り、一人一人が広告塔になることが大事です。
林 京都のまちなか戦略では通りごとの課題を検討しています。各通りの取り組みが結びつくと相乗効果が生まれ、全体の魅力が増し、回遊性が出てきます。車両規制は難しい問題ですが、考え方としては「この道は人が主役だ」と多くの人に認識してもらわなければいけません。
高橋 社会実験を進めるにはこつがあります。まず、とにかく参加すること。反対を向いている人も参加すれば横ぐらいは向くものです。それから、社会実験は繰り返しするものだと覚悟し、人と組織、財政を継続させることも大事です。そして合意ができたところから実行に移しましょう。さらに行政、市民、社会それぞれのリーダーを、実験しながら育てることが重要です。地方分権と人口減少が進むと、元気なまちとそうでないまちが明確になるでしょう。博多は九州の中心であり東アジアの核になるべき都市です。九州と東アジアのために何ができるかを考え、社会実験を地域おこしに発展させてください。
樗木 暮らす人、働く人、訪れる人、乗り継ぎする人の四タイプが交流する博多駅地区が車のまちでないことは確かです。人を主役にしたまちづくりで分かりやすさとにぎわいをつくり、歩きやすいユニバーサルな空間をつくり、環境や健康に優しい移動手段を提供し、まちづくりを進めましょう。市民一人一人、事業者一人一人が積極的に周りの人たちとかかわりを持っていかなければなりません。今回の社会実験が大きなきっかけになればと思います。