2009/08/28 会場:九州デザイナー学院
今年度の通り名付けは、デザインを学ぶ専門学校生との共同で活動していますので、学生さんたちの視野を広げられるように、セミナーを設定しました。ワークショップの前半に、主に「まちづくりとデザイナーの役割」といった視点で、様々な事例紹介や研究成果を交えながら、田村先生に講演して頂きました。
■まちづくりセミナー「まちのネーミング、まちの文脈、まちのリ・デザイン」
講演:福岡大学商学部 田村馨教授
「21世紀はデザインの時代」とも呼ばれており、そのデザインの領域が広がり、担い手となるデザイナーの役割も、プロジェクト全体を計画して推進することが重要になってきています。とくに、まちづくりにおいて新たな価値を生むデザインを導入するには、既に住んでいる人や活動している多くの人が居て、様々な調整が必要となり、その調整作業もデザイナーの重要な役割です。通りの名前をひとつ付けるのも、責任の重いデザインの仕事です。
本来、デザインは市場のニーズに応えるものというよりも、デザイナーが欲しいと思ったものを世の中に提案することに重点が置かれるべきで、日本の企業デザイナーも変革を迫られています。例えば、iPodは、iTuneというネットワークソフトウェアを介して、曲の探し方や買い方を含めた、音楽の新しい聞き方のシステムをデザインしました。他にも、リサイクルのしやすさを考えたペットボトルや、童心を取り戻す環境演出のイベント、デザインに物語りを加えてブランド化するメーカーなどの事例に見られるように、人の「行動」をデザインすることが求められています。
中心市街地のまちづくりにおいては、人の行動として拠点間の「回遊性」を高める仕掛けやパブリックスペースでのアクティビティを高めることが重要です。特に、街の活力はストリート(通り)に現れます。巨大な商業施設が人々を囲込み、周囲の地域とのストリートを介した回遊性を低下させると街全体が衰退します。集客力のある施設開発は、その周囲に何本ものストリートを創り出し、必然的に回遊性を生み出すような仕掛けづくりを努力すべきです。
こうした人々の行動をデザインするような新しい次代のデザイナーに求められる素養は、「観察力」や「感情移入力=共感力」のようなものです。見えないものを見るセンスを養い、当事者意識を持って、自分の中にある答えを発見できる人が、これからのデザイナーです。
■通り名ワークショップ2
チーム内でのグループワークとプレゼンテーションリハーサル
それぞれのチーム内で、これまでの作業の振り返りを行い、次回のプレゼンテーションに向けて確認を行いました。また、本番のリハーサルとして、各チーム1本の通りを選んで発表してもらいました。
あるチームは遣唐使との地域の交流の歴史からヒントを得て名付けました。また、キャナルシティ博多近くの頻繁に道を訊ねられるお店の店員さんの案内方法から名付けたり、公園で人が休憩している様子を名前にするなどのアイデアが説明されました。各チームとも、最終プレゼンテーションに向けて、準備を進めます。
要約・文責:福岡地所 溝口